酒精雑記

飲む日も飲まない日も

スモールベースボールのリアリズム

小笠原の粘りの投球で、敵地開幕3連戦を1勝1敗1分のイーブンでなんとかやり過ごした。チーム打率は1割8分台とセ・リーグではダントツの最下位ながら、広島の表ローテーションに5分の星というのは上出来である。試合展開からしても、つば九郎と並んで仲良く3連敗をくらっても全くおかしくなかったが、これをしのいだのは、良くも悪くも8番レフト根尾以外はレギュラー陣を前年からの流れで固定できているチームの落ち着きによるところが大きい。

野村の出来と9回打ち切り制からすれば、昨日は1点勝負との割り切りが正解であり、阿部と木下拓のバントは捕手ゴロとポップフライ気味でいずれもお世辞にも上手なものとは言いがたい出来ではあったが、ファウルなくともに1度で決めて攻勢のリズムをもたらしたところは評価してよい。キノタクのバントで根尾に回ったところでは福留・井領と代打攻勢をかけるのが正攻法だが、エラーの後に挽回のチャンスなく下げるようでは育成はままならぬということで、辛抱の采配に徹したことも前向きに評価したい。この場面、根尾はいいところなく注文通りの三振を喫したが、広島ドラ2の新戦力左腕の森浦が根尾に放った球には1つも失投がなかったから仕方ない。欲を言えば外スラは振ったところで安打にならないと割り切って見送り三振でよかったのだが、とにもかくにも森浦恐るべしである。

平田はビシエド申告敬遠後の打席で凄みのある表情をみせたが、外角球につられての三振に終わった。最後のハーフスイングがどうこうというよりは、その前に来た数少ない甘い球を仕留め損なったのが痛かった。スイング自体にはやはり迫力があるので、昨日の初安打となった2塁打で気分を切り替えてVドーム開幕戦にのぞんでもらいたいところだ。

根尾やビシエドの落球、阿部のファンブルなどはみられたものの、この3連戦は、周平を筆頭に総じて内外野の堅守が光る展開であった。ここぞの代走として起用された高松がモーションを完全に盗んで2つの盗塁を決めており、足に特化した選手として生き残りをかける彼の新境地が垣間見られたところも心強い。

こうしたリアリズムに徹したスモールベースボールで今季を乗り切るという与田監督の狙いがはっきり見えたように思う。広いVドームではその傾向がより一層明確となるはずで、大黒柱大野から始まる次の3連戦が本当に楽しみである。

荒天とローテーション

昨日は幸先良く先制したところまではよかったが、柳が崩れた後は好機に一打が出ないというもどかしい展開で、最後は栗林に初登板初セーブを許すという完敗であった。一喜一憂の日々が始まったなあと感慨に浸れるのは前日に勝っているからであり、五分の星を下回るようになれば、そんな鷹揚な気分ではいられまい。

今日はこれから30分開始時刻を繰り下げての敵地広島第3戦。レーダーを見る限り、確かに14:30には雨雲が広島を通り抜けていそうなので、このままプレイボールとなりそうだ。

中日先発は今季に背水の陣を敷く小笠原。オープン戦では一皮剥けた気配が感じられたので、調整日程どおり今日投げられるなら何よりだ。今日が中止となると、Vドーム開幕の大野をずらすわけにもいかず、勝野が予定されている来週水曜までスライドすることとなるが、この場合だと火水木と左腕が続いてしまうという難点が生じる(それとも松葉を3カード目第2戦まで押し出すか?)。もちろん大いなる不安を残す勝野を巨人に当てる不安を思えば、小笠原で行けるならそれもよしという向きもあろうが、開幕早々から6枚の並びがズレるよりは、予定どおりで登板させたいところだ。

下では梅津がバッチリ仕上がってきており、おそらく来週土曜の阪神戦で柳の代わって先発するのではないか。来週前半の勝野・松葉の出来次第で、柳が裏ローテに回るか、そのまま下に落ちるかが決まるというところであろうか。

今日の広島の先発は病み上がりとは言え中日には強い野村である。昨日一昨日と元気のない平田の昨年の対戦成績は6打数1安打と相性は今ひとつに見えるが、2019年は15打席6安打3四球と野村をお得意様にしている。今日こそ5番の存在感を示してくれることを楽しみにしたい。

開幕で取り残された男は今日筋肉に何を願う

9回裏、逆転サヨナラHRかと思われたライトフェンスへの菊池の打球には内臓が裏返ったが、9回打ち切り制を念頭においた与田監督の采配がことごとくあたっての開幕戦勝利となった。出場した多くの選手がそれぞれ持ち味を発揮したし、打たれた投手も致命傷を負うところまで行かずにベンチに戻ることが出来た。2時間半で完封されると覚悟した試合だったのに、各自の暖気運転を一通り終えることができた上に勝利も手にできたということで、まさに申し分のない初戦となった。

見所の多い試合であったが、個人的には、得点には絡まなかったものの、大瀬良の左足に当てた滝野の強襲安打とその後の盗塁に痺れた。ファームで時折顔をのぞかせていた謎のミートセンスが今年の1軍開幕戦で見られるとは思ってなかったので嬉しい限りだ。大瀬良の突然の乱調は福留の威圧感が直接の引き金であったが、その伏線として多少なりとも滝野の打球が影響を与えていたのではなかろうか。

チームのムードも良好と思われるが、1人だけ取り残された男がいる。昨日の平田の打席は、大瀬良の沈む球のキレのよさを割り引いても、何とも精彩を欠いていた。今日の試合でも乗り遅れた場合、後をひきそうな予感がしてならない。昨年の「2番の呪い」の再現はごめんだ。

今日の広島先発は久里。柳が安定感を欠いたままシーズン入りしたことを考えると、今日は是非先制したいところだ。昨年の平田と久里とは9打席対戦して2安打2四球。相性は悪くなさそうである。今日は、今年の出囃子の歌詞のごとく、背中に鬼神が宿ってる姿を見せて欲しい。お願いだ。ナイスバルク。

 

順位予想

開幕前日なので、セ・リーグの順位予想をなるべく冷静に考えて書いてみる。

1 広島

2 中日

3 巨人

4 阪神

5 ヤクルト

6 DeNA

広島は救援陣が新人頼みではあるが、先発陣は分厚いし鈴木誠也を中心とした主力打者の軸が定まっているので、栗林がはまって森下が2年目のジンクスにつかまらなければ、そろそろ調子が上向いてくるのではないか。開幕カードで中日がきっちり勝ち越せばその出鼻をくじくことができるので、この1位予想があたらないことを心から願っている。

中日はいつになく若いメンバーで開幕を迎えることになる。先発陣はオープン戦で大炎上が続いたこともあったが、大野・福谷・小笠原は丁度いい感じで仕上がっており、松葉も今日の好投できっちりまとめてきている。あとは頑張れ柳&勝野。打線が小粒なのはいかんともしがたいが、代打の切り札として福留がベンチにいることは昨年とくらべてかなりのプラスになるはず。2位に入ろうと思うと、京田と根尾のどちらかのバットにこれまでにないほど火がつくことが最低条件であるが、今後石垣と石川昂を上げる余力を残しているところに現戦力の妙味がありそうだ(福田もがんばれ)。本来なら中日が優勝と書きたいところだが、中盤から終盤を駆け抜けるだけの経験知がチームに足りないことを踏まえ、謙虚に2位予想とした。ただ、この順位に入るには、シーズン通しての実績がない選手の中から何人も今季で化けていただく必要がある。それだけの伸び代のある選手はそろっていると思うので、是非奮起してほしい。

巨人の下馬評はやはり高いようだが、先発が6枚揃っているのかどうかを考えると、中位に沈む可能性はかなりあるのではないか。阪神の戦力も投打にわたって相当に充実しているが、オープン戦で飛ばしすぎたチームは往々にして失速するというジンクスが当てはまりそうな気がする。ヤクルトは先発があまりに薄く、DeNAは純和製打線を当面強いられることを考えると、いずれも相当に厳しいシーズンとなるであろう。

・・・と書いてみたが、さてどうなるか。

 

長打力

勝野・福谷と先発大炎上試合が続いたことについては目をつぶって、打線の迫力不足に目を向けてみる。

昨日の1軍2軍の先発はこんな感じであった。

1軍 2軍

大島 遠藤 

京田 福田

阿部 福留

ビシ 郡司

周平 藤井

平田 石川昂

滝野 堂上

木下 石垣

根尾 土田

石垣の復調ぶりには目を見張るものがあり、何か(といっておく)の呪縛がようやく解けたのなら何よりだ。

しかし、うーん、何だろう、ファームの面子の方が長打期待値が高いような気がしてならないのは。。。だとすると今のオープン戦の貧打はさして気にすることもないということか。そうであってほしいところだが・・・

2軍は由宇からタマスタへと遠征が続くので、入れ替えがあるとすると名古屋に戻った3/15あたりか。そこまでに根尾君も固め打ちできるところを見せないと、少々苦しくなってくる?

うむむむむ。

 

このところ見た映画

根尾君は、レフト線ツーベース以来、痛打という感じの安打はほとんど出ていないのだが、昨日も外角をうまくレフト前に落として打点を稼いでおり、怪進撃を続けている。このしぶとさは案外本物なのかもしれない。左翼8番あたりで開幕先発というところが、今の彼の目標であろう。岡林も黙ってはいないという構えであり、こうした若手の切磋琢磨感を近年感じることがなかったので、なんだか新鮮だ。

2月はほとんど読書をせず、わずかに空いた時間に映画をいくつか観たので、その備忘。

 

恋する惑星

原題の意味を理解してから観るべきだったか。群像連作っぽいつながりだがそこの仕掛けは今ひとつ。フェイ・ウォンをみるたびに、ウソコイの最終回が放送されなかった20年前の逸話を思い出す。

 

マルホランド・ドライブ

何とも感想を言いにくい映画。スジを理解できかどうか不安になってググるというカテゴリに入れておく。

 

「私の少女」

安定のペ・ドゥナ姐さんは、飲んでるボトルがどうしても酒に見えないところだけは難点だが、屈託をかかえつつ修羅場も淡々と裁くところがカッコイイ。虐待されまくる子役さんの成長に悪影響が出ていないかが心配だ。暴走おばあの勢いに乾杯。

 

「人類滅亡計画書」

1話は食事しながら観てはダメなやつだが、コロナ禍の今の衛生感覚で観ると公開時の倍は楽しめているはず。2話はアンドロイドが悟りを開いたらという設定が秀逸。いい。3話はシュールなノリを狙って外すとおおいにツラいという教訓を噛みしめる映画となってしまった。自転車発電は「アンダーグラウンド」へのオマージュかと楽しめたが、999の車掌さんやペ姐さんの無駄遣いはいかがなものか。

 

「ティマイ」

ベトナムから養子をもらうはずだった娘を交通事故で亡くしたため、代わりにその母がはっちゃけた友人2人とともにハノイに女の子を迎えに行くという物語。ベタな設定と言ってしまえばそれまでだが十分佳作として楽しめた。現地の役所のおじさんが良い。アマプラがなければ目にすることはなかった掘り出し物。

 

「ブリット」

話の筋がわかりにくいし粗も目立つが、スティーブ・マックイーンのPVだと割り切って観ていたので気にはならなかった。殺し屋が市民の風体であるところが渋い。

 

「ブルーアワーにぶっ飛ばす」

こけっこーな夏帆もこんな年代になっちゃったのねという感慨を最初から最後まで感じられる1本。シム・ウンギョンに当て書きしたかのような清浦の役回りが良いし、途中まで誰だかわからなかったまさかの南果歩のおばちゃんぶりは怪演のカテゴリに入るだろう。島田久作まで出てくるので、なつかしの帝都大戦を思い出さずにいられない。渡辺大知のセリフも意味深だし、伊藤沙莉の大茨城ど真ん中のスナックは下品で何よりである。尺は短いが何とも見所の多い映画だ。最後のオチがキモなのだが、これをよく考えると、リアルと幻想の境目を楽しむことができなくなるところが少々難点か。

福岡の惨劇と中止試合

オープン戦はペイペイでのSB2連戦。初戦は先発笠原と後を受けた橋本が大炎上で、如何に最強を誇るSB相手とは言え、プロとして恥ずかしいレベルの試合の壊れ方であった。首脳陣としても本来は当落線上の選手を福岡に帯同する予定はなかっただろうが、練習試合が雨でたくさん流れたため、振り分け作業をこの2試合でやらざるを得なかったことからすると、やむなしであろうか。ただ、左の先発が手薄な中で笠原が復調したかと期待した分、落胆も大きい結果となった。

第2戦は同じ4安打でもSBは3HRで4打点。ここの違いは長年の球団の編成方針のツケでそのものある。当たりそこねがHRになるような野球を拒否する本拠地バンテリンの構造の志の高さは嫌いではないのだが、その壁を悠々越える打球を飛ばせる選手を獲って育成するという志を編成部門がすっかり忘れているので、何ともならないわけである。

この2戦で、投手陣を見る限り、清水・岡野の成長と又吉の好調というあたりが、昨年の戦力への上積み要素と言えるが、心配は(どうにも勝野がピリッとしないところと)打線の迫力不足である。

長打を期待できる打者がそもそも少ない上に、石川・石垣・石橋・郡司がそろって2軍で、石岡も鳴かず飛ばず、福田が上がってくる様子もうかがわれないとなると、よほど根尾・岡林か福留が大飛躍しない限りは昨年以下の打線で開幕を迎えることが予想される。この時期に滝野・三好・伊藤を試さざるを得なかったのも中止試合数との関係であろうが、パのブンブン振ってくる連中との体格の違いが際立ってしまい、なんとも淋しい限りだ。

さて、根尾は初戦では大差がついた後ながら2点タイムリーを放つも、2戦目はいいところなしで終わった。8番9番で楽に打たせながら馴染ませるべきだと思うのだが、1本打っただけで次の試合から即1番に抜擢というのも、落ち着きのない話である(1打席でも多く経験できるのは悪くないのだが)。京田の代わりに途中で遊撃に回ったところもなかなか意味深な采配ではあったが、ひところより調子を落としてきているようにも感じられる。次戦では心機一転の活躍を期待したい。

 

両翼のいない2月

早くも3月に突入。いよいよコロナとの本格的お付き合いも1年となるわけで、何もない月日は案外早く過ぎるものだとしばしたじろぐ。影響の大きな立場の人には信じられないほど長い期間であったろうに、社会が分断されるのをただ家の中でつったって指をくわえて見守るだけの歯がゆさよ。

2月も休肝日は11日を数えた。家人の留守で1週間以上3度3度の料理をする経験を経て、自炊スキルの向上が実はこっそり楽しくなってきており、いよいよ外食マインドが乏しくなっていく。

さて、昨日の雨天途中中止の楽天戦の前に、根尾君には外野への辞令が出ていたようだ。どこかで打線にぶらさがっていればこそ、打棒を示して京田不振時には取って代わることもできようというもの。ショートから外すだけではもったいないと首脳陣に思わせるところまでは地位を向上したのだから、まずは合格点だ。

ただ、さして長打が出ていない根尾が左翼か右翼の候補に回るというほど、ここまでの外野陣の打棒の湿り具合は何ともいただけない。実のところ福留は獲るべきではないと考えていたのだが、こうなってみると獲っておいてよかったとしか言えない状況となってしまった。

大穴が空いているポジションに若手がきっちり名乗りを上げられないようでは、中日の躍進はない。根尾と石川昂がの2人が、外野手にふさわしい打力を示して両翼を埋める3月となることを心待ちにしている。

根尾の粘り

レベルの高いレギュラー争いが見たいと書いたら、巨人との練習試合では、DH京田が対外試合初安打となる長打を放つと、9番遊撃に入った根尾も負けずにタイムリーと互角のしのぎあいとなった。

今日の阪神戦では2番遊撃で先発した京田が守備でいきなり悪送球とやらかしたが、直後に2塁打で挽回し、珍しく四球でも出塁を決めた。途中出場となった根尾は、どうやら守備でも良いところをみせたらしい(動画未確認)が、1度切りとなった打席でもライト前に安打を放ち、今日もしぶとく京田に喰らいついた。

いいねえ。

教え魔の功罪

対外試合はこの2戦で今季もまたと思わせる迫力不足が続いてしまっている。ついに石垣は1軍から陥落。代わりに昇格の高松が相変わらずの宇宙人的とらえようのなさの中にも光るものを見せており、これはこれで楽しみなのだが、「和製浅村」という謎のキャッチフレーズが存外にもはまるかと思われた石垣は、昨季の2軍無双となる以前の外スラくるりんぱ状態に逆戻りしてしまったようだ。

スタッフ陣の評によれば、石垣は意外にも真面目に考え込みすぎるタイプらしく、個人的には、いわば「右の森野」というような、どこでも守れてパンチがあって読み過ぎずに来た球に反応して振り切ることができるという方向に育ってほしかったのだが、どうやら福田2世襲名と思われるほどの悩みの深さが垣間見える。自主トレ明けは浅村の下で思い切り良く振り切るための何かを掴んだ感じがプンプンとしていたのだが、沖縄キャンプに入っての立浪臨時コーチの指導が仇となったか。ヒントを与えるのではなく、型にはめようとする指導の様子をみてハラハラしていたのだが、ここにきて心配が現実のものとなったようだ。

立浪がつきっきりで指導した京田もここまで6タコといいところがない。昨年後半にはバットを寝かせて新境地を開いたように見えたのだが、キャンプ終盤のこの時期に、打席毎にバットを立てたり寝かせたりと試行している様子が見える。それがゆえにまだ根尾にもチャンスが残っているのだが、できることならより高いレベルでのレギュラー争いを見たいものである。

そもそも秋に試しておくべきことを、春のキャンプに入ってからあれこれ指示されれば、迷いも生じるというものであろう。昨季の反省→秋の試行→正月明けの自主トレでの反復修練→春キャンプでの微調整で仕上げ、というサイクルの中で球団は立浪にどのような役割を求めたのだろう。次期監督の顔見世興行としてはなかなか罪深い沖縄ツアーとなってはいないだろうか。権藤が紙面で苦言を呈するのも当然である。

幸いにも臨時コーチ業はすでに終了し、背中で目を光らせる存在もいなくなった。引き出しから出してもらったもののうち、取り入れるべきものは取り入れればよいが、皆、個人事業主である。己という軸をもって聞き流すということができないと、近時ではドアスイングを酷評されるあまり迷走した堂上直倫、歴史を辿れば、かの教え魔山内一弘をもってして大成させられなかった藤王康晴の、二の轍、三の轍を踏む選手が続出しかねない。

残りわずかな調整期間でなんとか復調を果たしてほしいところだ。