酒精雑記

飲む日も飲まない日も

火の用心

『ハロルドが笑う その日まで』を観る。

年末のくさくさした気分がないでもない夜に、からっと愉快な北欧コメディで気分直しと思ってチョイスしたのだが、イメージとはかなりちがってた。重いし、考え出すと深い。多分現地語ではかなりシニカルなことを言っているのだろうなあと想像されるシーンも、字幕かつ非英語となると、ニュアンスを把握しきれないため、今ひとつ笑いに乗り切れない。

主演の家具屋と妻の造形はとてもよい。ロードムービーというには景色にバリエーションがないところが残念だが、とおりすがりで巻き込まれる(巻き込む?)少女との出会いやIKEA創業者を偶然拾う流れも、ある種のファンタジーとして許容可能である。元北スウェーデンチャンプのリボン演技にも多いに拍手できた。

やけっぱちで自分の家具屋を焼くシーンはCGなのか?多分CGなんだろうなあ。実際に火を放っていたなら、『サクリファイス』や『吉原炎上』と並び称してもよいような、いけないような、複雑な気持ちになるところだが。火付けのからむ映画という点で、ある意味非常に年末的な作品でもある。マッチ一本火事の元。

IKEAとしても、上手に創業者の楽しい豪快さ・磊落さをイメージ付ける営業戦略として変化球的な太っ腹を見せたのだろう。IKEAのトップが若い自分にナチスに傾倒していたというネタは知っている人は知っているのだろうし、特に現地では特に知られた話なのだろうが、私自身はこの映画を観るまでぜんぜん知らなかったので、その後ネットで調べた結果も踏まえてIKEAのイメージは大きくダウンした。それゆえに、この映画にゴーサインを出したIKEAの勇気と茶目っ気が、かえって際立つものとなっているという逆説。嗚呼。

結果としてハロルドが笑うその日が唐突にやってくるのだが、シチュエーションの重さを乗り越えて大笑いするに至る心理が説得的に描かれていないように感じたので佳作とは言いがたいと思う。ただ、北欧の日常ことを少し知って見ようと思うきっかけとしては貴重な小品か。

で、鑑賞後にあらためてノルウェースウェーデンの撮影地の地理的関係性をグーグルマップで確認してみたのだが、ハロルドの住むオサネを探すと、どんぴしゃであのIKEAが表示され、笑いが止まらない。

 

昨日の酒量 休肝