酒精雑記

飲む日も飲まない日も

『星宿海への道』

昨日の酒量 ヱビス350×1/2、軽井沢ビール黒350×1

やはり黒ビールは唐揚げと相性がよいことを確認できた夕食となった。

お盆は仕事をしながらも夕方からは自宅でのんびりできているので、読書が進んで快適だ。数日前に読み終えたのは宮本輝の表題作。中国内陸奥地で自転車で消えた兄の不在を巡るストーリー。少年期の生活ぶりの描写が秀逸で、大阪の濁った運河とこの筆者の相性の良さを再確認した。主人公の1人である女性の実業家の義父の大人っぽさも良い。

女性と兄とが一線を越えてつきあい始めた経緯はどこかで明かされることを期待したが、最後の方で兄の重要な性癖とともに駆け足で示唆されるに留まった点はちょっと物足りないが、あえて余白を残したとも言えよう。人によっては風呂敷を広げたままで閉じていないことを欠点とする向きもあろうが、結末まで兄が消えた謎は明かされないままとなることは予感できていたのでこの点も違和感はない。

ただ、小説中に偶然を配置することはおかしくないとしても、その偶然が感動のポイントとされてしまうといささか興醒めではある。違う場所であっても、そこから見える光景がその人にとっての「星宿海」として解釈できるものであれば十分であったはず。展望台の一致をあえてもってきたところだけが、この良作中の唯一の難点としてどうしてもひっかかってしまった。