酒精雑記

飲む日も飲まない日も

『不時着する流星たち』

昨日の酒量 ヱビス350×1.5本

ヱビス0.5本分は、ビールで作るきゅうりの浅漬けの材料に供出した。

6月に文庫化された小川洋子の短編集を読み終えた。早々に購入して前半を読み終えたところで、他の本に浮気してしまい、途中読みのままずっと鞄に入れ続けていたので角が丸まってしまったが、素晴らしい宝物入れを日々持ち歩き続ける楽しみ自体に浸ることすらできたとも言えようか。

まず1本目の短編を読んでいくと、頭のなかに?マークが並んでいく。短編なので、間もなく不穏なエンディングを迎えてしまうのだが、その最後のページをめくった瞬間に「!」となる、ひそやかな企みに満ちた1冊である。うっかりと、いくつかの編では、少しズルをして先にそこを読んでしまうという禁忌を犯してしまった。

これらの雑多な種の数々が心の中で自由奔放に芽生えて育っていってこうした作品になるという、その過程を想像すると、何ともぞわぞわとした気持ちになる。創作者のスタートとゴールを一緒に愛でることのできるのはとても楽しい体験だ。

いずれの作品でも、周囲に対しては固く秘密を守りながら、著しく不穏で正しくも不適切な精神が育っていくプロセスが丁寧に描かれている。他から見れば異形としかいいようがないものであっても、人それぞれが自分の「ルール」に忠実であり続けることの美しさ、そしてそこから滲み出る恐ろしさがいまにもはち切れそうな小説群である。

その中で、文鳥にまつわる一編は、筆者にしては珍しく、自身のルールを破る過程が書かれており、とても興味深かった。あるいはそのルール自体が、主人公の置かれた境遇の中で生み出されたかりそめのものだったということが強調されているのだろうか。

いつまでも目の離せない作家である。