麒麟到来
柳が崩れてヤクルト3タテを逃した翌日に、ナゴドとは言え今季の鬼門のDeNA戦。そこに、まさかの麒麟を見た。
いよいよ運も尽きるかと思われた松葉が、ソトに右前に上手くはじかれて同点には追いつかれて勝ちは付かなかったものの、身上を取り戻しての好投で7回まで試合を作った後の8回。郡司がスイングをとられてもおかしくない見送りで今日2個目の四球を選び満塁。ここで途中出場の遠藤が深々とレフトに飛球を放ち、決勝の犠飛となった。
今季の遠藤は終盤で登場し、渋い安打や四球出塁で好機を作るといういぶし銀の活躍を見せている。脇を固める役者が仕事をするという、昨季にはみられなかった層の厚さを感じさせる勝利であった。
特筆すべきは試合終了後のヒロインであろう。ネット民からは放送事故すれすれといわれた愛想のなさであったが、レギュラーを獲れず、安打を放ったわけでもない今日の成績は、当人の理想とする自画像からはほど遠いものであったはず。彼の美意識が台上に立つ己の姿を良しとしていないことは、受け答えの端々からほとばしっており、ファンサービスな観点からは全く評価できない態度と言われるであろうが、地味な存在であった遠藤という選手の個性を、今日、はじめてファンとして受け止めた心持ちがした。
今季のNHKの大河では、悪女であるべき帰蝶の青さが目立ち、代役の辛さは慮るとしても、「別に」と言い放ったかの女優の不在による喪失感は覆いがたいものがある。その穴を埋めるかの如き今日の遠藤のヒロインは、台を降りてからドアラにいじられたときの会心の笑顔とともに、深く心に焼き付けられた。
今季何もしていないようなものだという己のふがいなさを語ったその姿からは、反骨の気概を存分に感じさせてもらうことができた。俺はまだまだこんなもんじゃない、という気持ちがあるうちは、大丈夫だ。
今期は「代打三ツ間」あたりで、一度は糸の切れた気分であったが、そこからの反攻には目を見張るものがある。これがそうは続くかいなという思いもあったが、昨日の小休止後の勝ち星をこうした形で呼び込んだところからは、まだまだ期待してもいいんだよね、と思えるようになった。
遠藤よ、明日も先発ではないだろうが、(今日は明日のデーゲームに備えて早寝して)限られた機会に己を燃やして欲しい。
なお、外野のライバルであるアルモンテも、今日はナイスな守備であったことに触れておくこととしたい(万一抜けていたら、目も当てられなかったけどね)。
明日明後日が、今期浮上の可否の試金石であろう。目が離せない日々が続く。