酒精雑記

飲む日も飲まない日も

『グラン・トリノ』

昨日の酒量 ヱビス350×1、ボンベイサファイヤソーダ×1

以前から観るリストには挙げていたものの、なんとなく手が出ていなかった『グラン・トリノ』を観た。

作品の細部は素晴らしい出来であり、神父や床屋の造形もgoodである。ただ、世評ほどの感銘を受けなかったのは、次の4点がどうしても気になったため。

①スーのやられぶりがあまりにかわいそうすぎる。痛々しすぎて観てられない。

②スーがそうなるに至るきっかけが主人公のヒロイックな行動に端を発している。

③大切な隣家の年配の友人の事実上の自死と引き替えの安寧が得られたことは、むしろ姉弟の心に深い負の影を落とすはず。ラストシーンでグラントリノを運転するタオの表情には強い違和感あり。

④かなり先になるとは言え、出所してきた男達からのさらに激しい報復が不可避であり、問題は解決していないと考えるべき。

クリント・イーストウッドは、かつて演じたダーティー・ハリーのような感性がもたらす報復の連鎖について、この映画で「懺悔」したかったのではないかと思える。中西部の自動車不況地帯を舞台として人種を越えた人の繋がりを描いた2008年のこの映画が、その後の米国内の人々の心の決定的な分断を阻止できなかったのは、全く残念である。イーストウッド監督がこの後も映画を制作し続けているのは、それゆえであろうか。