酒精雑記

飲む日も飲まない日も

『神戸・続神戸』

昨日の酒量 ヱビス350×1、白ワインボトル2/3

鱧天で酒が進んだ。

西東三鬼が戦時・戦後の生活を描いたエッセイ(私小説?)を読了した。そもそも俳句には疎いし、三鬼の人となりなどについても全く予備知識がなかったが、新聞の書評が目にとまったので買ってみたという書籍である。

今の倫理観と照らし合わせるとさすがにどうかと思うところもあるが(東京に残された三鬼の正妻があまりに気の毒だ)、死と隣り合わせの生活の中から滲み出る三鬼の文体のユーモアと、それを支える孤高の精神がとても良い。登場する人物がいずれも魅力的であるところも良い。人は逞しい存在であり、そしてはかない存在であるということが、そうした登場人物の姿を借りてさらりと表現されている。巻末の森見登美彦の解説も秀逸で、読んで感じたことが一回り昇華された形で表現されていた。

本作については映画にしたいという話もあったということが『続神戸』の中で明かされているが、その後実際にNHKが1977年の「人間模様」枠でドラマ化しているとのこと。タイトルは『冬の桃』。脚本は早坂暁、演出は深町幸男他、主演は小林桂樹三田佳子で、西村晃大竹しのぶ笠智衆も出ているという豪華版だったようだ。NHKオンデマンドを探してみたが収載されておらず、大変に残念である。