酒精雑記

飲む日も飲まない日も

『マダム・イン・ニューヨーク』

昨日の酒量 プレミアムモルツ350×1、香の森ジンリッキー×1

原題は『English Vinglish』。珍しく邦題がナイスな海外映画であった。筋書きは王道で、ひねりがないといえばないのだが、マダムの心理が丁寧に描かれていて良い。NY語学学校の面々も愉快で楽しくて良い。英語に不自由な日本人としてはなかなか身につまされる映画でもあるが、その分マダムの戸惑いに心から共感できるので、やや長尺の映画ではあったが、飽きることはなかった。インド映画お得意の踊りのシーンは出てこないのかなと思ったら、最後の最後に、監督が我慢しきれずとうとう入れてしまったという感じで大団円ダンスが始まるのも楽しい。

なんと言ってもマダムのかわいらしさが、この映画を大きく支える屋台骨となっているが、この時点で彼女が御年50歳だったということを視聴後に知って絶句した。インド恐るべし。しかも昨年ドバイで催行された親族の結婚式に出席した先のホテルの浴室で物故されたということを知り、人の運命の数奇さに複雑な気分となった。合掌。

 このマダムが丹精込めて作るラドゥというお菓子が美味しそうなのだが、代表的なレシピを見ると、ひよこ豆の粉に大量のギーとこれまた大量の砂糖を入れるとのこと。酒飲みにはちとつらそうだ。

さて、邦画ではあまり印象に残らないのだが、洋画ではパーティーや集会でのスピーチシーンが映画最大のヤマとされるものが少なくないように思う(特にハリウッドもので多いか?)。世でそのように呼ばれているかどうかは知らないが、個人的にはこれらを「スピーチ映画」というジャンルに分類している。そもそも映画で伝えたいことは画で示すべきで、テーマとなる内容を主人公に言葉で丸々しゃべらせてしまうというのは何とも興醒めである。そのため「スピーチ映画」の評価はどうしても辛めとなりがちなのだが、本作は外国語によるスピーチそのものがテーマの映画なので、結婚式のヤマ場のシーンも抵抗なく観ることができた。

人の自尊心というとても大切なテーマを盛り込みながら、軽やかな映画にまとめきった監督の手腕に拍手を送りたい。