酒精雑記

飲む日も飲まない日も

『なかなか暮れない夏の夕暮れ』

昨日の酒量 uncountable

昨夜はずいぶんと飲んだ。

江國香織の小説を手に取ったのは初めてだと思う。読書にまつわる群像小説というなかなかおもしろい着想の一冊で、10日ほど前に読み終えた。

富豪の末裔である中年姉弟の優雅な生活ぶりが興味深く、彼らを取り巻く人々がそれぞれに抱えた屈託が少しずつ明らかとなっていく展開も面白い(税理士の彼はなんとも気の毒だが)。絶妙に断片化された小説内小説のほどよい通俗さもそこはかとなく可笑しいし、そして何よりも、小説世界から現実に連れ戻された瞬間の所在なさを鍵とするこの小説を読みながら、ふと目を上げたときに生じる浮遊感がとても愉快であった。