酒精雑記

飲む日も飲まない日も

映画備忘(3-4月)

3月から4月にかけて観た映画についての覚書。

『知りすぎていた男』

ロッコの風物が楽しいヒチコックの一作。正直に言って子役男児に今ひとつかわいげがなく(冒頭のバスで騒ぐ様子が何ともアレな感じ)、誘拐された後も心情的になんだか入り込めないところが残念。ドリス・デイの歌には、さすがの聴き応えあり。

『5パーセントの奇蹟』

後天的視野障害を抱えながらホテルマンになる夢を叶える実話もの。同期入社の軽いノリの兄さんとの友情が楽しい。

コンテイジョン

ともすればゾンビや陰謀モノに流れがちなジャンルである感染症映画の中で、リアル路線を走り抜けた一作。以前一度観たことがあったが、こんな世相なので再鑑賞した。そして以前観たときも思ったが、なんとまあ良く出来た映画なのだろうと寒々しく再認識するに至る。豪華俳優陣の中で、スーパースプレッダーとして主演?を張ったパルトロウ姐さんが何とも気の毒な役回りで同情を禁じ得ない。

『天国から来たチャンピオン』

幼少期のTVロードショーで何度か観た際のおぼろげな記憶を基に、自分の中ではオールタイムベスト10に入れあったはずの本作。今回じっくり観てみると、ストーリーの都合上で試合中の事故死に至るエースQBが不憫でならない。だったら大富豪抜きで最初からそこで入れ替わればよかったじゃん、という脚本の粗が何とも目立つ。

『ジョーカー』

バットマンに対する思い入れは全くないものの、『her』がとても良かったホアキン氏の主演ということで観てみた。『タクシー・ドライバー』ほど尖りすぎておらず、娯楽性と芸術性が上手にセットになった良い映画だ。

ウインド・リバー

予備知識なく家人と視聴し、重要なシーンなのだがその壮絶さが故に何とも気まずい空気が流れてしまったものの、ネイティブ・アメリカンの置かれた状況に光を当てた佳作である。なんと言ってもハンター親父が渋かっこいい。被害者父が多分こんな感じとやってみたメイクの雑さが、そこはかとない悲しさをかき立てるところも良い。

『フォードvsフェラーリ

アイアコッカクライスラーの人としての印象が強かったが、移籍前のフォードでは、実際この映画に描かれたような筋書きの活躍があったことをWikipediaで確認した。チームオーダーによる順位操作はモータースポーツの世界で珍しい話ではないが、やはりなんともほろ苦い。ルールの確認は大切だ。伝統のル・マン式スタートが楽しい一作。

マイ・インターン

年の差・立場の差を超えたウェルメイドな友情物語。アン・ハサウェイがとにかくスクリーン映えするので、彼女が出ているだけで良い映画が成立してしまうのは何だかズルい気もする。おとぎ話過ぎて入り込めないときには、暗黒街のボスが経歴を隠して新興IT通販企業を乗っ取る物語の第一章だと思いながら観るのも一興か。家事育児に飽きた夫の浮気がバレるシーンや、バレてから花束で帳尻を合わせるシーンでは、夫の心の声をアフレコする楽しみもあったりする。とにもかくにも外出時にはハンカチを持ち歩こう。

『天国と地獄』

映画が撮影当時の風物を保存する貴重な器となることを実感させる一作。クルマも渋いし電車も渋い。前半の屋内劇は時代を考慮してもセリフ回しが仰々しいように思えて入り込めなかったが、7cmの秘密を明かす特急車内のシーンは切れがあるし、電話の背景音から江ノ電を割り出すあたりもの流れも秀逸だ。ただ、警察が見張る伊勢崎町の路上で山崎努三船敏郎が交錯するシーンでは、被害者側が実は黒幕というどんでん返しをうっかり期待してしまったので、見終えたときの感想がなんだか微妙なものとなってしまった。貧民窟でトタンをひっかく音はトラウマになりそうなインパクトあり。