『イエスタデイをうたって』1~11
運動不足解消のため自宅内でバイクを漕ぐ30分の間に、今期アニメ化された冬目景による本作のさわりをAmazonプライムで視聴したことをきっかけに、つい原作にも手を出してしまい、17年かけて完結したという本作を2日間で一気読みした。
すでに多くのサイトで評されているように、設定上の謎を明かし切った後はストーリーの方向性が大きく変わってしまい、とりわけ主役級であったはずのカンスケの不遇は目を覆うばかりであるが、変更された後に全面展開される『めぞん一刻』テイスト満載の人間関係が何とも懐かしい味わいに感じられ、ずるずると最終巻まで読み進めてしまう。正直なところ、後半に入ると、音無響子よりも面倒な女と五代裕作よりも優柔不断な男が何度も繰り返すグダグダにはこれ以上つきあいきれんわという気分にもなった。ただ、下北沢地区を舞台にした映画や小説は枚挙にいとまがないものの、そこを西に外れて環七を渡った先の羽根木・代田・松原エリアが舞台となる作品は滅多にないだけに、リタイアが許されないような気がして完走してしまった。
ここらあたりが出てくる小説としては、吉田篤弘『それからはスープのことばかり考えて暮らした』(赤堤~下高井戸)、三浦しをん『木暮荘物語』(新代田と世田谷代田の間くらい。ただし環七の内側か?)がある。たしか井上荒野の『キャベツ炒めに捧ぐ』の舞台も東松原商店街だったような気がするが、手元で文庫本が見つからず確認できないのが残念。