酒精雑記

飲む日も飲まない日も

11月のふりかえり

あっという間に師走を迎えた。W杯はドイツ戦スペイン戦とも前半の結果を確認してから熟睡している間にまさかの逆転劇となった。通しで観たコスタリカ戦だけ負けており、今晩のクロアチア戦を何時まで観戦するか悩ましいところである。

11月の休肝日は14日。週末に連日近所の横丁で深酒するということがあったわりには、平日はそこそこ節制した1ヶ月となった。

読書は4冊。

『夜更けのおつまみ』は業界誌連載の酒肴にまつわるコラムを集めたアンソロジーで31名の執筆者がそれぞれの好みを開陳している。同じテーマの作なので大変比較しやすいため、筆者の力量の差が如実に分かってしまうところがおそろしい。ともあれ、ちょいつまみとしてのオイルサーディン缶の使い勝手の良さは、衆目の一致するところか。

タイトルと著者名だけ見てレジに持っていった『夜行』は、森見登美彦お得意の京都腐れ学生ものかと思い込んでいたが、まさかの奇譚怪談ものであった。各章の不穏な結末を結末で回収できているのかどうか、全体としてはとっちらかった感じも残り、直木賞選考時の高村薫による「書きかけの習作」という手厳しい選評が的を射ているが、習作ならではの味わいを楽しむべく、ありもしない隠された謎の答探しを仕向ける出版社の企てには乗らずに、怪談としてのゾワゾワにゅるにゅるな読後感に身を委ねるべき一作と言えよう。

村山由佳の『星々の舟』は、職場向かいの公園に出店していた古書店の文庫棚からインスピレーションで抜き取った中の1冊。ある一族のそれぞれの物語を紡ぐ連作だが、いろいろ盛り込みすぎて、設定がなんだか技巧的に見えてきてしまったのが残念。筆者渾身のテーマとなるはずので引き揚げ者の物語は、出来れば別の小説として読みたかった。直木賞受賞時の津本陽による「果物籠に果物を盛りすぎたような不安定感」との選評は誠に辛辣だがそのとおりと感じた。ただ五木寛之による「小器用にまとまった熱気のない作品など、読んだところで仕方がないではないか」との援護射撃も大変良いところを突いているなあとも。

海浜の丘の宿に泊まりにいった際に本棚にあった『春琴抄』の文庫は、その場では読み切れなかったので、残りの部分は帰宅後に青空文庫で読み切った。句点を極力使わないという独特の文体が妙に癖になった。基本読書は同時代作家派なので、近代文学夏目漱石くらいしか手がのびなかったが、もう1作くらい谷崎を読んでみようかと思う。

『生きてるだけで、愛』は、旅先に持ち出して冒頭を読んだところでどこかに紛失してしまった。文庫のカバーは剥いて持ち歩く派なので、主を失った本作のカバーが淋しく本棚にたたずんでいる。中身だけどこかで購入できないものか。

映画は5本。

建築学概論』は王道の韓国恋愛ドラマ。女と再会したときの男の反応と、最後の最後にちょっとだけくっついてしまうところには筋として瑕疵を感じたが、丁寧に描かれたストーリーをしっとりと楽しむことができた。

建築繋がりで視聴した『コロンバス』もなかなか見応えのある佳作であった。オハイオモダニズム建築の聖地があるということも知らなかったが、建物だけでなくストーリーも静謐で良かった。

劇場で見損ねた『シン・ウルトラマン』がアマプラに登場したので早速視聴した。ウルトラマンネイティブ世代としては『シン・ゴジラ』よりも素直に楽しむことができた。異星人が1人で世界征服に来ちゃうところや、地球を防衛するメンバーが数人という規模であるところなど、旧作での世界観を壊さず大がかりにしすぎなかったところが好印象であった。

『バーフバリ』『バーフバリ2』は『RRR』を観に行く前の肩慣らしのつもりだったが、肩はむちゃくちゃ暖まったのに多忙にかまけて『RRR』をまだ観ていないというていたらくである。とにかく破天荒で外連味たっぷりなところが楽しい2作であった。

中日の来季の陣容はほぼ固まった。現役ドラフトが残っているが、各球団が任意に2名を候補とする今回の仕組みだと、飼い殺しで才能が埋もれている選手が投入される可能性は乏しいはずで、この結果によって戦力面で大きな違いが出ることはないだろう。

アキーノ獲得の報には久々に球団のやる気を感じることができたが、外の球に手を出さずに我慢できるかが勝負であろう。三振率の異様なまでの高さはいまさら指摘するまでもないところだが、その割にはMLB通算でのIsoDが0.74とそれほど悪くないので、案外見るべき球は見送っているんじゃないかと期待したい。

コーチ陣の発表が大幅に遅れた割には、来季も落合がヘッド兼任のままであるなど、新味に乏しい印象で、裏でいろいろな人選を検討したものの希望の人材を引っ張って来れないままだったのではないかと想像されるところである。一部で観測気球が上がっていた清原の招聘が見送られたのは何よりであるが、PLルート以外で人を見つけることができていないのではと、ちょっと心配になる。

ただ、プレーをするのは選手であり、その起用法についてはこのストーブリーグの人事の結果として、旧来のレギュラーを切り、若い戦力でチームの骨格を作るという方針は明確となった。石川・鵜飼が怪我から復帰できることに全振りした戦力構成であり、賭けの方向性自体は合理的であるから、これが当たることを祈るしかなかろう。

あとは2000本目前の大島の処遇であるが、アキーノがよほど外れではない限り、もはや完全上位互換となった岡林によるリプレースを進め、両翼は大砲を置くのが定石であろう。内野も二遊間が小粒でHRが見込めないのであるから、いかに打率が高くとも単打中心の選手を外野に2名置く余裕はないはずだ。ここでさらなる非情な割切りができる監督であれば、来季の上位進出も見えてくるのではないか。さて、どうなる?