酒精雑記

飲む日も飲まない日も

5月のふりかえり

5月末から先週あたりまでいろいろ時間に追われて振り返りが遅くなってしまったが、5月の休肝日は合計12日。GWで飲む機会が多かったわりには後半にまずまず節制したというところであろうか。

振り返って気がついたが、映画はなんと1本も観ず。なぜだろう?

読書は次のとおり。

古井由吉の随筆集である『東京物語考』は数ヶ月前から1章ずつちびちびと読み進めて5月で読了となった。古くから上京者の物語が小説の題材にされてきたことを知り、独特の語り口も含めて楽しむことができた。著者の作を読んだのは本作が初。

1Q84』の文庫本も5月から手にとり、月末までに2冊読み終えた。6月に入っても続きを読んでいるが、やはり村上御大の長編と私はあまり相性がよくないのかもしれない。高尚なラノベ的な面白さは感じているが、この主題でこの尺が必要なのだろうか?

『中野のおとうさん』は「円紫さんと私」完結後の日常の謎新シリーズなのだろうか。ビブリア古書堂的ジャンルを北村薫が博覧強記を背景に書いてみたという趣きの1冊だったが、なぜだろう、登場人物の造形に「私」さんのような魅力を感じることができなかった。

山歩きは山中の居酒屋を実質的なゴールとしたGWの里山ハイキング1回のみ。6月も週末を仕事などなどに喰われているうちに入梅に至った。明けまではこんな感じが続くのだろう。

さて、中日ドラゴンズの成績は、6月に入り交流戦最後のシリーズで6連敗と大コケし、借金8でのリーグ戦再開となった。DeNAはまだしも、まさか「予祝」で迷走した阪神に追いつかれるとは思わなかった。

もっともセの順位を見ると、ヤクルトが完全に独走態勢を固めた反面、広島が中日以上の交流戦沼にハマって完全に失速しており、巨人にも勢いは感じられない。昨日の大野の踏ん張りと阿部のいぶし銀の活躍で、再開幕に菅野を宛ててきた巨人に先勝できたこともあり、下位5チームのゲーム差は詰まったままとなっている。苦しい状況ではあるが、2012年以来のCS進出という現実的目標はまだまだ手の届くところにある。球宴までの31試合を何とか五分以上で凌いで、後半戦も勝負の興味を失わずにファンが伴走できるようにしてほしいところだ。

迷走気味にチーム事情にさらに混迷をもたらしているのが根尾の扱いである。なかなか出番に恵まれなかったが、たまの代打の打席などで見る限り、根尾の打撃は過去3年と比べてかなりよくなっていた(山崎武司も同じ感想のようだ)。投手転向を決める前に遊撃先発で5-10試合くらいは使ってみるということがあってもよかっただろうに、という思いは尽きない。

根尾が入団当初に自認していたとおり、プロで通用する彼の最大の武器は「肩」であることは過去3年で一層浮き彫りとなったのであるから、投手転向が選択肢となることは全く否定しない。しかし、そう決めたなら、1-2年後には先発で二桁勝てるような選手になって、さすがドラ1という結果を出してほしいのである。少々回り道はしたものの大卒でドラ1レベルの投手をとったのと同じ結果になったね、と笑って言えるようにしてほしいのである。

すなわち、投手にすると決めた以上、根尾に必要なことは、一旦ファームに移って徐々に長い回を投げられるよう数ヶ月以上をかけて調整し、今年の後半戦あるいは来年春からのローテの一角を目標とすることである。それなのに、根尾は今日も1軍に帯同したままであり、しかも野手登録のままだったりする。これはあまりに悪手である。営業面を考えたフロントの指示だったりするなら、本当に最悪だ。

遅ればせながら福留をファームに落とし、ビシエドも聖域とせず今日のようにベンチスタートもありうるという方針の修正が可能なのだから、根尾についても、早々に腹を決めて、きっちり先発投手としての育成を進めていただきたいところである。

なお、根尾の転向は土田龍空とっては千載一遇のチャンスである。ファームでの出番を大幅に奪われかねない危機は脱したのであるから、戦線に復帰したら今季の間に頭角をあらわして皆を安堵させてほしい。

 

交流戦を前にして

今日から交流戦。ここまで44試合を消化し、シーズンは3割まで進行したことになる。

中日は一時貯金3までため込んだが、コロナ禍で若き飛車角である石川・鵜飼を欠いたまま転落の一途を辿り、借金4まで落ち込んだ。丁度開幕2カード終えて暗澹たる気分となった時点と同じ立ち位置である。しばらく上位4チームによる混戦模様が続いていたが、中日が脱落し、セリーグはABのクラス分けがはっきりついてしまった。

同時期を振り返ってみると昨年は借金7、コロナ前の2019年が借金5と、もう少しだけ悪い成績だったがまあ似たり寄ったりである。とするとこの先もさらなる転落もありうるということか。

ビシエドも花火が上がったのは一瞬という感じで、大砲爆発の気配は感じられない。遊撃守備に周平がついたり、根尾が敗戦処理で投げてみたり、無安打福留を1軍に残し続けているのにラクな場面で使ってみるということもせず、結果を出した石岡がファームに逆戻りと、とにもかくにも狙いのわかりにくい起用も目立つようになった(とはいっても根尾の投手適正は早めに確認したかったのだろうし、あの球は今の彼の打撃よりも3倍くらい魅力的であることも確かだが)。

そんな中での打撃コーチの入れ替えである。元祖暴れん坊の中村ノリの指導は、なんでもかんでもいじりすぎで自分の形にはめるところが目立ったので、やむを得ないかなと思うところはある。ただ、チーム状態が悪いときであるからこそ、腹を据える必要があると思うのだが、なんで首脳陣までこう落ち着かないものか。

現監督の教え魔ぶりは往年の山内一弘監督に匹敵するなあと、昨年のキャンプゲストのときから感じざるをえず、正直なところ80年代半ばの弱小時代のよくない記憶を喚起させられてきた。この山内路線に短気の王様高木守道の系譜が重なっているとなると、もはや心配すぎて内臓が裏返りそうだ。井端との口論、権藤との離別、福田の2塁守備、黙れ素人が!等々、現役時代の職人肌な雰囲気からは想像もつかない強烈な伝説の数々を提供してくれた瞬間湯沸かし器路線を踏襲するようなことが万が一にもないことを、ただただ祈るばかりである。

DH込みで立浪監督が選びそうなオーダーを予想するならこんな感じであろうか。

大島8・岡林9・周平6・ビシエド3・アリエルDH・阿部4・鵜飼7・木下2・石川5

個人的には次のような組み方がベターではないかと考えている次第。

大島8・鵜飼7・アリエルDH・ビシエド3・阿部4・木下2・石川5・周平(根尾)6・岡林9

今日はDHなしだがアリエルを外したようだ。うーん、大丈夫か?

4月の振り返り

4月の酒量は月~木をほぼ律儀に素面で過ごしたので休肝日は合計14日。外食機会も徐々に増えてきたが、あくまで家人と週末に出かけることが主であり、仕事の仲間内での宴会解禁までは、まだハードルが高いようだ。

4月は映画は観ず。

読書は3月末から読み始めた『ベルリンは晴れているか』を読み終わるのに時間をとられて合計4冊に留まった。この深緑野分の話題作は精緻な舞台美術の上で演じられるドラマが面白そうで実はそうでもないという、なかなか評価に困る一作であった。旅をする必然性がよく分からないと、せっかく魅力的なバディが集まっても良質のロードムービーは成立しない。映画『ドライブ・マイ・カー』が画竜点睛を欠いたのもこの点であった。ユダヤ人をカリカチュアして映画に出演した男の戦中と戦後という、すばらしい着眼点のテーマを見つけたのだから、ミステリー仕立てにこだわらず、この悲喜劇を掘り下げた物語を読んでみたかった。直木賞選考における高村薫の評は誠に辛辣だが、本質を突いてしまっているのかも。

たまたま書店での巡り合わせで手にとった乙川優三郎の『ある日、失わずにすむもの』は、これをフィクションとして読めないご時世となっていることの寒々しさを噛みしめながら読み進めた。このテーマで小説が書かれていたことの凄みを感じざるを得ない。

映画のネタ本を読みたくなって手にしたのが、津村記久子の『君は永遠にそいつらより若い』。映画がとても丁寧に作られていることが、あらためてよく理解できた。主題は違うのだが、出てくる学生がいずれもそれぞれに真剣にこの世を生きているという点で、私の中では『青が散る』の平成版という位置づけとなった。

『壁の男』は初めて手に取った貫井徳郎の一作。自宅内の壁に始まるアール・ブリュットがコミュニティに受け入れられていくところは、実際の絵の魅力がビジュアルに出てこないとやはり説得力を欠いてしまう。実直な男の生き様に惹かれなくはないものの、そのストーリーに不慮の事故が2つと難病死が1つ出てきてしまうと、作者の手のひらの上で涙を流したくないというあまのじゃくが、私の心の中で騒ぎ出してしまうのであった。

中日は鵜飼・石川昂のアベック弾で一気に阪神3タテかと思いきや、柳が大山から同点弾を浴び、無双の成績の中であるが安定感はいまひとつであったジャリエルが内野ゴロで勝ち越しを許すという残念な展開で、GW最終戦を黒星で終えた。しかしこの時期に貯金1で上位戦線に留まっているというのは、監督首脳陣以外の補強を行わなかったチームとしては大変に立派なものだ。野手運用の柔軟性という点で、立浪采配はアリだと思えるので、応援していても楽しくてよい。先発陣では勝野の長期離脱があまりにイタいところではあるが、とにかく交流戦までは5割ちょい上のラインで何とか踏ん張ってもらいたい。

 

君子豹変に拍手

昨夜の代打で初安打を放った根尾に、負傷の癒えぬ岡林を代走とした采配は、どう考えても不合理であった。延長の可能性を見据えたならより一層駒は大事に使うべきであるし、リード中の右翼守備固めと考えるなら根尾の守備力の方が上である。根尾のベースランニングもさして悪くないことを考えれば、走塁で手を怪我した岡林を無理に使うことはなかった。

そんな前日のもやもやを吹き飛ばしたのは、今日の根尾遊撃再コンバートの朗報である。1軍登録抹消の上で今日からファームで1番遊撃での出場となった。残念ながら今日の打棒は振るわなかったようであるが、これから5-10試合程度、遊撃守備の調整を行い、その間に京田よりも打てるところを示し、できれば連休後半には再昇格を果たしてほしいところだ。ただ、実際には多分もう少し中期的展望でファームにて調整を続けることになるのだろうとも思う。

外野手登録で開幕を迎えた今季である。見ようによっては朝礼暮改で根尾の育成が迷走しているようにも受け止められるであろうが、大島が絶好調で鵜飼と岡林が1軍レベルでやっていけるポテンシャルを存分に示し、アリエルのコンバートもそれなりにはまりつつある現在、根尾の1軍でのポジションはまさかのブルペン込みの便利屋以上のものではない。他方で京田はこのところは多少上向きであるものの、いつになく送球は不安定であるのに、ファームでは土田がここにきて壁にあたっており、新戦力星野もまだまだとなると、本気でその座を脅かすライバルが不在と言わざるを得ない。

こんな戦力の状況に合わせて早速手を打った首脳陣のレスポンスの鋭敏さは、このところの中日にはなかった君子豹変ぶりであり、その柔軟な姿勢には喝采を送りたい。与田政権下では郡司をはじめとして期待されるコンバートが遅々として進まなかったことと比較しても、チャンスを与えて試してみて、その結果を踏まえて次の手を打つというサイクルを回し続けることができる活力ある組織となってきたなあと、頼もしく感じる次第である。

無論根尾が遊撃レギュラーを奪取するためにはもうふた皮ほど剥ける必要はあるものの、このところは自分に期待される役割が見えなくなっていたはずであり、そこが明確になった今回の再コンバートである。競合ドラ1としての期待値との比較はさておき、前年前々年比では着実に成長を遂げている。今季後半には京田の尻に火がつくことを期待したい。

 

夢の滑り出し

中日はセ5球団一回り+αの17試合を終えて貯金3。開幕2カードで借金4まで下った時点では全く想像もしなかった夢のような滑り出しである。

大島のバットは4割をうかがう火の噴きっぷりで、OPSも.9台半ばと月間MVP候補筆頭と言ってよさそうだ。この年齢になって過去にないほど活躍するというのは誠に凄いことである。

阿部は得点圏打率.462で打点はリーグトップタイの13打点。ひところの不調は完全にくぐり抜け、なぜ打てているのか自分できちんと理解できているレベルまで、ついに到達したのであろう。周平の怪我からのひょうたんから駒ではあるが、とにもかくにも阿部抜きの4月を想像するとぞっとしてしまう。

木下は安打1本出た後ずっと好調を維持しているので、本当に開幕戦のあの一打がフェアになっていたらもっとすごかったのに、とたらればを言いたくなってしまう。

開幕から怪我をおして出場しつづけてきた岡林は、ここまで17安打を放つ活躍であったが、さすがにそろそろ息切れ状態のようで、きっちり休んで怪我を治すことも成長過程の1つであろう。それにしても失敗なしの4盗塁は特筆すべき数字であり、オープン戦の憤死が無駄ではなかったことを見事に証明したのは凄いことである。

そして石川昂と鵜飼である。おそらく鵜飼は膝の故障癖を抱えているがゆえに、毎試合先発という形では起用していないのだろうが、それでも2人で合計4HR。おそらくシーズンが終わるころには、控えめな期待値としても合計30本くらいに達するのではないか。毎試合、どんな展開でもこの2人が出ていると攻撃中に飽きる場面が全くないので、これが何よりもよいことであると思う。

先の記事で持ち上げた京田は相変わらずやきもきさせてくれるが、8番でクラッチヒッター振りを一応は示せているので、ギリギリ合格点か。ただし送球の不安定さは目をつぶりにくいレベルになりつつあり、たまには石垣を使ってみるというのも手ではないか。

控えメンバーでは、根尾・福留には安打がなく、山下もいまひとつである。石垣はここにきてようやく監督から次代の柱の1人として認知されたようだが、ここまでの5打席で1単打とまだまだ本領を示すには至っていない。巡り合わせ悪く福元は打席に立てずに2軍に逆戻りしたが、代打陣がいささか精彩を欠いているこのタイミングで、2軍9番で無双状態が続いている石岡に(おそらく野球人生最大であり、かつ拾えなければ確実に最後となるであろう)チャンスを与えてほしいところだ。

あとはビシエド君、君が目覚めるだけだ。ここに伸び代を残していることが中日最大の強みだと思うので、そろそろ爆発してほしい。

 

 

 

京田の走塁に痺れた

DeNAに3連敗後、大瀬良・森下の登場するカードで望外の3連勝を得た。両エースの踏ん張り、大島・岡林の躍動、ビシエドの復調気配など、なんとも盛り沢山な3日間であったが、地味な見所として昨日の京田の走塁をあげておきたい。

得点には絡まなかったものの、外野を抜けてもいない単打に終わりそうな当たりで外野守備の油断を突き、1塁を回ったところでスピードを緩めることなく2塁を狙い、余裕をもってセーフとなった。

先のカードでは3塁を狙ったシーンで牧のミラクルな好返球の前に憤死して絶好のチャンスを潰し、ファンからの批判を一身に集めたばかりである。あのとき、京田がセカンドを回った時点でまだ中継の牧への返球の途中であり、しかも牧は深々と外野まで出張っていた。何度見返しても京田の暴走ではなく牧のスーパーファインプレーであり、あのカードの黒星2つは牧1人にやられたものと言って過言ではないのだが、あの悪夢のような記憶がまだまだ鮮明であるはずなのに、守りに入らず、よくぞチャレンジしてセカンドを陥れたものだ。この走塁には痺れた。

勇気があるのか、切り替えが早いのか、はたまた記憶力がひょっとしたらアレなのかは良くわからないが、不調脱却のきっかけは案外こんなワンプレーだったりするので、そろそろ彼も上昇機運なのではないかと密かに期待している(でも8番からは動かさないでね)。

 

 

3月のふりかえり

本拠地開幕カードで手負いだったはずのDeNAに3タテを喰らうという屈辱的な月末であったが、鵜飼の「詰まった」打球がチケットを取り間違えた母の待つ左翼席中段に刺さったシーンを観ることができただけでも満足である。そう自分の心に言い聞かせてはみたが、今日の相手の先発が大瀬良では気分が晴れぬのもやむなしか。

3月の休肝日は16日。週末に一度軽く体調を崩したため、普段よりも酒を飲まない日が多い結果となった。

映画は5本。

ワールド・オブ・ライズ

デカプリオとラッセル・クロウリドリー・スコットが撮った豪華な一作のはずだが、実際にはそれほどのワクワク感もなく、潜入スパイがアイシャにうつつをぬかす必然性もなく、なんだかなという感想が残った。ヨルダン情報部チーフの白ハイネック&ジャケット姿はかっこよかった。

君は永遠にそいつらより若い

津村記久子の原作は未読。映画が良かったので発注をかけてみた。アホで楽しい学生集団の中で、ささやかな揉んで揉まれてを経てちょっとだけ成長し、小さな志を胸に社会に出て行く主人公の姿(戸の前でぐっと息をのんで覚悟を決める最後のシーン)が良かった。

スプリング、ハズ、カム

東京の大学に合格した女子大生が父と上京して部屋探しをし、祖師谷にアパートを借りたというだけの話を、とても丁寧に描いた良作。都会の初めての夜の長さを感じる姿で終わるところもよい。

いとみち

津軽三味線達人の孫がメイド喫茶でバイトする話。スプリング、ハズ、カムと同じく「母の不在」の映画でもある。三味線を弾ける女子を選んで主役にしたのかと思ったが、この役のために練習したとは。終盤の演奏シーンは見応え十分で、フラ・ガールと双璧をなす出来映えだ。ストイックな店長とジョナゴールド(すごい芸名だ)演じるクラスメイト、そして岩木山山頂からの眺望がよかった。

エイブのキッチンストーリー

ニューヨーカーであるユダヤムスリムの間に生まれたハイブリッド少年が文化の狭間で思い悩む中、料理に活路を見出す物語。料理も美味しそうでよい。双方の実家の大人たちが大人げないのだが、その大人げなさにも人の命がからんだ重たい歴史があるので、簡単には大人になれないのも仕方ないのだ。それでもどこかで希望を見出すことだってできるというストーリーは、今のウクライナ情勢とあまりにマッチしていて、何とも複雑な気分となった。

読書は2冊に留まった。

宵山万華鏡」

森見登美彦による祇園祭を舞台としたファンタジー。その雰囲気を知らないものにはちょっと難しい作品であったか。

「風のない日々/少女」

野口冨士男の小説ははじめて。本来は私小説作家ということだが、本作は戦前の東京下町で起きた殺人と戦後間もなくの財閥令嬢誘拐という実際の事件を題材にした、とおり一遍の三面記事では触れられない人の心のひだの不可思議さに焦点を当てた客観小説(という言葉を初めて解説で知ったが)である。生活のディテールが執拗に説明され続けた上でのあっけない幕切れが印象に残った。

 

今日もマスターの一発で先制したと思いきや、大野雄がゲッツーをあせって逆転に至ったところだ。さてどうなるやら。

 

本拠地開幕戦での黒星

同姓の元中日の彼のイメージが強く、なんだか打てそうな気がするのだが、残念ながらDeNAロメロは全く別人であり、昨日はその出来が良すぎた。昨年からの苦手相手に散発3安打では采配云々ではないような気もするが、それでも打てる手はきっちり打ってほしかった。

3番鵜飼がズバッとはまっていたので、彼をベンチに押し出し外野を左にずらしての根尾先発起用がこのタイミングであるとは全く思っていなかった。DAZNの解説では、昨年の根尾はロメロから5の3だったとのこと。この相性に加えて、僅差が想定されるバンド初戦で外野守備に穴を空けたくないとの意図があったのか。菅野vs福留もしかり、対戦相手との過去の成績をかなり重視する起用法に、今季首脳陣の特徴があるということらしい。ただ鵜飼にせよ石川にせよ今季からの新戦力であり、比較の対象を持たない選手のまさに現在の調子と過去の実績とのどちらを優先するのか、その価値判断にやや疑問なしとはしないところではある。

そこは結果論としても、開幕カードでいよいよ打席での迷走が目立つ京田を2番で起用したのは愚策であった。根尾の相性に賭けたのなら、岡林大島の1番2番の好連携を崩さずにビシエドへと繋ぐ目的で、京田は8番に固定し、根尾ー岡林ー大島ービシエドというようなラインナップで臨むのが、正しい腹のくくり方ではなかったか。

ロメロのコントロールに変調が生じた終盤の追撃機では、代打山下がピタリとはまり、詰まりながらも外野に運ぶ力で1・2塁にチャンスを広げた。まだ9回にも攻撃があることを考えたら、3点差とは言え、2点目をもぎ取っておくことは重要だ。次の京田に代打を出すことを考えて代走溝脇という手の打ち方があったはずだが、山下がそのままランナーに残った。

しかも次打者京田で福留(あるいは鵜飼)が出てくるかと思ったのだが、その手が打たれることもなかった。結果として乱調ロメロから死球出塁を得て満塁までチャンスが拡大したのでこの悪手が目立つことはなかったものの、開幕カードで見せたビハインドでの攻撃的選手交代とは全く対照的な受け身の姿勢では、初白星のときのように勝機をこじあけることは期待しがたいであろう。

ちなみにこのところの京田は以前にも増してファーストへの送球が荒れすぎでヒヤヒヤする。源田を超える男を目指すなら、この難点は是非早々に解消していただきたいところだ。

福田をセカンド守備につかせた高木守道の采配はさすがに浅慮であったとしても、立浪監督の采配には、攻撃時の選手交代でも聖域を設けずに先手先手で攻めていく姿勢を求めたい。大島をレフトで先発させることができたのだから、それは不可能ではないはずだ。

 

立浪竜初白星

2本柱を1戦3戦に据えて盤石の体制で臨んだ東京ドーム開幕巨人3連戦は、結果として1勝2敗でやりすごした。連敗後の柳の初回炎上で誰しも3タテを覚悟したはずだが、巨人の継投陣も安定さを欠き、終盤怒濤の追い上げで最後は伏兵溝脇が2点勝ち越し打で試合を決めた。バンドに戻る前からチーム崩壊の序曲を聴かずに済んだことを天に感謝しなければならぬ。第3戦は3番鵜飼が機能して、好調1番2番と中軸に繋がりが出来たことが大きいと思う。

わずか3戦ではあるが、立浪監督率いる首脳陣の采配の方向性もかなり見えてきた。野手については柔軟かつビハインド時の攻撃的な起用が目立った。これは良いことである。与田時代は守備への配慮に偏った硬直性が目立ち、何ともストレスフルであったが、出し惜しみせず控え選手にもチャンスを与える首脳陣の意図がはっきりしており、選手の側の士気も上がるのではないか。

3戦を終えて根尾の出番がなかったことがいろいろと取り沙汰されているが、ライバル岡林が無双の活躍を示す中で、内野も守れるが故の器用貧乏な立ち位置からすれば、緊急時の最後の備えのためのベンチ地蔵の役割が彼のところに回ってきてしまうのは、今の布陣からすればある種必然であろう。とはいえ、昨年の石垣のような飼い殺しになるとも思えないので、バンドでの6連戦では、試合終盤に回ってくる役割をきちんとこなし、少ない打席で結果を出すことに集中してほしい。根尾のバッティング最大の課題は確実性であり、漫然と打席を与えるよりも代打で1打にかける経験を積ませることの方が、彼の野球本能を刺激するという意味でも悪くないように思う。

投手は岩嵜がボール4つで離脱という残念な結果となった。スプリットが武器のパワーピッチャーというと木下雄介である。岩嵜が投げる前から肩を気にしていたシーンを見返しても、木下雄がマウンドで肩を外したときの姿と重なってしまった。万全の体調だったなら、こうした場面で抑えのAチームに昇格する姿も見ることができたかもと、つい考えてしまう。あらためてご冥福を願う。合掌。

投手起用も(初戦のジャリエル起用以外は)明確な意図が感じられるので、ストレスは感じない。ファンの心の古傷を抉る東京ドームの田島スクランブル登板も、あの場面では仕方あるまい。第2戦を好投した勝野をスパッと2軍に落としたのは、岡野との併用(あるいは高橋宏斗を含む鼎用?)を当初から想定していたようであり、6番手以降を厚くしておくという意図がはっきりしていて良い。

采配でいただけないのは、リクエストの場面が何ともはやな感じであることか。ここだけは、ファンとしても気恥ずかしくて居心地が悪かった。この点だけは早く慣れてもらいたいものだ。

地元開幕シリーズでは、同じく開幕カードで躓いたDeNAをきっちり蹴落としておきたい。もたついた大野雄や柳をあざわらうくらいの好投を慎之介が見せてくれることを期待している。

 

 

 

開幕黒星

立浪竜の初戦は残塁の山を築いての敗戦となった。自分の足で同点のホームを踏み、主砲のHRで勝ち越した後も、大野雄の投球がうわずったまま低めに決まらなかったのがすべてであろう。

打線を見ると、京田・投手・大島・岡林と続く8番から2番に長打が見込めないところがネックと思いきや、大野雄の内野安打からポランコの不味い守備を突いた好走塁もからんで岡林がしぶとく同点タイムリーを放つなど、単打と足の組み合わせで下位打線からクリーンナップへ繋ぐところまでは素晴らしい出来映えで、根尾に出場機会を譲る隙をみせなかった岡林にプロ意識を感じた(無理なホーム返球の一件がなければパーフェクトだったね)。

結果として3番福留は大ブレーキとなったが、各打席のたたずまいや狙い球の絞り方はさすがであり、投手には相当のプレッシャーがかかっていたはずだ。5番木下も第1打席でレフト線に痛烈な打球を飛ばしており、あれがフェアだったらその後の打席のノリも違ってきたはずで、最終打者となった際のヘッスラは全くのご愛敬としても、5番木下は我慢して続けてよいと思う。

心配なのは石川昂である。単に結果が出なかったということではない。オープン戦最終盤で元に戻したはずの足の上げ方(左足をバッターボックスの内側にチョンと突いてタイミングをとる形)をやめて、上げたまま空中でためをとるという形になっていた。どちらが技術的にどうということではなく、高校時代からの基本の形に戻して復調の兆しを見せていたのに、開幕戦のぶっつけ本番で違う形にしてしまうのは迷いがあるからこそであろう。自分で築いた基本の形からスタートして微調整するという自信を失っているのであれば、少々重症かもしれぬ。誰しも今季初の安打が出れば気持ちも変わるはず。今日その良薬を得られるかどうか、運の要素も含めて石川昂の打席からは目が離せない状態が続く。

立浪采配の思い切りの良さは、今季は12回まで延長戦があるということを忘れさせるほどのものであって、評価は分かれるかもしれない。選手を使わずに9回で負けが決まるくらいなら、延長戦で用兵に困難が生じようが代打代走を投入していくという割り切りは、後手に回ることの多かった与田中日とは好対照だ。今年は外野一本とは言え、根尾ならショート守備スクランブル発進も対応可能である。なんとなれば石垣だって守れなくはない。複数ポジションを守れる控えが充実しているのだから、追いつかなければ問題とすらならない延長戦のやりくりを考えて出し惜しみしないことは是と考えたい。そうであるなら打順が溝脇のところで石垣か根尾まで投入するというさらなる割り切りがあってもよかったのではないか。延長で手駒が足りずに負けたところで、とにかく一度打席に立たせておくことは、2戦目3戦目に向けた布石にもなったはず。最後の最後で躊躇があったところは、監督1年生がこれから学んでいくところであろうか。

もっともこうした投入が許されるのは野手陣に限る話であり、今季の抑えAチームはMRIだといいながらジャリエルを投入したのはどのような意図であったのか。開幕からここの役割をはっきりさせなかったのはいただけない。どうせ2点のビハインドである。昨年くすぶった森あたりに場数を踏ませるには絶好の試合だったはず。立浪初戦とは言え所詮は143分の1である。投手起用に関してはそう割り切る必要があったのではないか。

今日の勝野には大きなプレッシャーがかかることとなったが、そのために明日には柳が控えている。課題の立ち上がりを乗り切るために必要なのは、強いハートだけだ。多少打たれようが、なりふり構わずストライクゾーンで勝負をかけてほしい。